「宿題、写させて!!」
教室に入って凛が
開口一番に口にした
良かった。の意味が
今の台詞で理解できた。
「また忘れたのー?」
常習犯と言ってもいいほどに
いつもこの場面に出くわす。
両手を顔の前で合わせて
深々と頭を下げる姿も
すっかり見慣れてしまった。
「やる気はあったの!でも一問目からわかんなくてさ、一気にやる気なくなっちゃった」
「そういうのはやる気あったって言わないの。ったく」
凛の言い訳を跳ね除けて
渋々鞄の中からノートを取り出す。
「毎回毎回優しいねぇ、香蓮は」
机に頬杖を突きながら
美奈が嫌味のこもった言い方でにやりと笑う。
「うるさいなぁ」
負けじと精一杯嫌味っぽく返すけど
どうも美奈の迫力には
敵いそうもなかった。