駅の真ん前。

こんなに分かりやすい待ち合わせ場所、ない。

人が多いから、なかなか待ち合わせ相手を見つけ出せないならともかく、迷うなんてありえない。

と思いつつ、晴山さんならやりかねない、とも思ってしまった。


どこか抜けている彼女のことだから、遅刻の理由として、寝坊したという選択肢もなくはない。

でもなんとなく、彼女はたとえ待ち合わせに間に合う時間に家を出ても、迷ったとか降りる駅を間違えたとか、考えられないような理由で遅れそうな気がした。

そういえばこの前、俺が陽の誕生日プレゼントを選ぶために付き合ってもらったときも、晴山さんは時間通りには現れなかった覚えがある。



「まぁ、いいや。行くよ。どのへん見たいの?」

「えっと、速水くんはどんなのがいいと思う?私、志賀先輩のこと何も知らないから」


歩き出した俺のほうに駆け寄ってきて、隣に並んで歩き出した晴山さん。

今日は夕方から、陽の誕生日会がある。

晴山さんは急遽来ることになったので、当日プレゼントを買いにいくことにしたのだ。

それに、俺も付き合ってるというわけ。

晴山さんの参加の理由は完全に陽や生徒会メンバーのわがままだから、手ぶらでいいんじゃないかって言ったんだけど、彼女は全力で否定してきた。

『せっかく誘ってもらったんだもん、私にもプレゼント渡させて』って。