♯1 side*遥斗
「遅い」
俺の少し強い口調に、晴山さんはしゅん、と肩を落とした。
「ごめんなさい……」
時計の針は、午後3時10分を指している。
待ち合わせは3時ちょうどだったから、晴山さんの10分の遅刻。
登校日ではないので、お互いに見慣れない私服姿だ。
今日の晴山さんは秋らしいチェック柄のワンピースにカーディガンを羽織っていた。
足下のブラウンのショートブーツのヒールが結構高いせいだろう、いつもより視線が近く感じる。
……この前、陽の誕生日プレゼント選びに付き合ってもらったときも思ったけど。
晴山さんって、制服よりも私服のほうが少しだけ大人びて見えるような気がする。
「迷っちゃって」
「……あんた、実は方向音痴でしょ」