『ふられても、諦めない』
私の言葉を信じて、そう決めてくれた速水くん。
それなのに、私が諦めてどうするのって、思ったんだ。
私にもできることがあるのに、諦めたらダメだって、思ったんだ。
どうしてだろうね。
速水くんの恋なのに、私も速水くんの恋のために頑張らなくちゃ、って思ったんだ。
「……遥斗と付き合ってない、って、それを言いに来たの?」
しばしの沈黙の後、先輩は静かにそう言った。
「はい」
ちゃんと言いたいことが伝わったことへの安堵に息を吐いて、私は頷いた。
よかった。
ちゃんと誤解、解けたみたい。
「そっか。……うん、わかった。そうよね、遥斗がそんな器用なことできるわけないもんね」
「器用なこと……?」
よく意味がつかめずに聞き返すと、志賀先輩は小さく笑って目を伏せると、首を横に振った。
「ううん、ごめんね、なんでもない。
それにしても、遥斗に女の子の友達がいたなんて、知らなかった。私がこんなことを言うのもなんだかおかしいけど、……仲良くしてあげてね」
ふわりと浮かべた志賀先輩の笑顔は、私には絶対真似できないくらい整っていて、やっぱり非の打ちどころがないくらい、綺麗だった。