「先輩が一番よく知ってますよね?……速水くんの、好きな人」


意を決してそう言うと、志賀先輩の大きな目が驚きに更に大きく見開かれる。


「私は、速水くんの彼女なんかじゃありません。ただの、友達です」


────ごめん、速水くん。

きっと君が聞いたら、「晴山さんって俺の友達だったの?」とか冷たいことを言ってくるんだろうけど。

今だけ、友達ってことにしておいて。

やっぱりそれしか、私達の関係を表す言葉が思いつかないんだよ。



「昨日は突然だったのでちゃんと言えなかったんですけど、やっぱりちゃんと言わなくちゃって思って……」


昨日、速水くんと別れたあとも、ずっと考えてた。

自分のことが情けなくて仕方なかった。

速水くんが感じただろう痛みが、どうしてか私のことも襲ってきたの。


いつもだったらきっと、仕方ないや、で終わらせてた。

私はどうせ、役立たずなんだって。

肝心な時に何も言えなくて、動けなくて。

何もできないくせに、何もできない自分に、一人前に後悔だけはできて。


そんな自分を、諦めてた。

それでもいいやって、思ってた。

でもね。


「速水くんは、簡単に心変わりするような人じゃありません」