「あれ?あなた、昨日の」


志賀先輩の教室に辿り着くと、運よくドアの近くに志賀先輩を発見して、声をかけた。

すると、志賀先輩は不思議そうな顔をして私のところまで駆け寄ってきてくれる。

制服姿の志賀先輩も、やっぱりきれいなままで。

化粧なんてきっとほとんどしていないのに、目鼻立ちのくっきりした整った顔立ちは、昨日と全然変わらない。


「どうしたの?」

首を傾げると、まっすぐな長い志賀先輩の綺麗な黒髪が、サラリと揺れた。


「えっと」

「……あ。もしかして、私と遥斗のこと?心配しなくても何もないから、大丈夫よ?」


安心して、とふわりと笑みを浮かべる志賀先輩に、胸がぎゅっと痛くなった。

昨日と同じ痛み。

速水くんの、痛み。


「……そうじゃないんです」


「え?」


ぽつりと呟くような私の言葉の意味を掴み損ねたようで、志賀先輩は戸惑ったように聞き返してきた。