「あの……?」


そんな速水くんに、私はただただ困惑することしかできなかった。

手首に込められた力は思った以上に強くて、ふりほどくことができないことはすぐにわかったから、抵抗せずに速水くんの言葉を待つ。


「……」


「……」


どれくらいの時間が経ったか、やがて速水くんは大きなため息と一緒に私の手首を解放してくれた。


「……はぁ。失敗か」

「なんだったの?今の?」


掴まれていた手首をさすりながら、速水くんにそう訊くと。


「練習してみた」


とさらりと返された。


「練習?」

「ん。物理的な距離を縮めてみたら、女子ってドキドキしてくれるもんなのかと思ったけど、そうでもないみたいだな」


うーん、と難しい顔をして腕を組む速水くんに、私は思わず笑ってしまった。