♯2
ザワザワと騒がしい人混みに取り残されないように、私は懸命に目の前の人波をかき分けて進む。
日曜日の駅前は何かイベント事があるようで、家族連れを中心に多くの人で賑わっていた。
「きゃ……!」
急に私の前を横切った、小学生くらいの男の子。
そのままのスピードで歩いていたら衝突しそうになってしまったから、私は慌てて立ち止まる。
なんとかぶつからずに済んだけれど、ふう、と安堵の息を吐き出したと同時にハッとして前を見れば、さっきまですぐ前を歩いていたはずの背の高い後ろ姿が、いつのまにやら遠くに見えた。
もう。
歩くの、早いよ……!
私は心の中でため息をついて、
「速水くん、待って!!」
と声をあげた。
周りの喧騒にかき消されてしまわないか心配になったけれど。
すぐに彼は私の声に気付いて立ち止まり、振り返る。
……そして、ものすごく呆れたような表情をして、私のところまで戻ってきてくれた。