「……え」
唇をはなして真正面から彼と向き合うと、驚いたように目を瞠った速水くんの表情が見えて、思わずクスッと笑ってしまう。
すると、笑われたことが面白くなかったのか、速水くんはキュッと眉をひそめた。
「何笑ってんの」
「あは、だってすごい驚いた顔してるから」
「いや、だってあんたが急にそんなことしてくるとか思わないでしょ」
速水くんはそう言って、自分の腕を掴む私の手をやんわり解くと、その手をそのまま引き寄せて。
「ていうか、ちゃんとここにしても、怒らなかったのに」
互いの唇が触れそうな距離でふっと笑って囁くようにそう言うと、そのまま距離をゼロにする。
今度は驚かされたのは私の方で、甘く囁かれた瞬間も、柔らかく唇が触れた瞬間も、全然頭がついていかなかったけど。
私の身体に回された速水くんの腕にかかる力が少し強くなったのを感じて、私はゆっくり目を閉じた。
────好き。
私、この人のことが大好き。
「……明李」
とても長く感じたキスのあと、優しく名前を呼んでくれた速水くんのことが愛しくてたまらなくて。
至近距離で絡んだ視線。
眼鏡の奥の瞳が、とても綺麗だと思った。
「速水くん、大好き」
素直に言葉にしたら、速水くんは驚いたような表情をして、もう一度、優しいキスをくれた。