「……彼がいなかったら、ここに立つことにここまでの覚悟を持てなかったかもしれない。

生徒会長の重みを、ここまで自覚できていなかったかもしれない。

そんな大事で当たり前のことを気付かせてくれた人なんです。

生徒会に必要だと思ってるし、仲間になってほしい」


速水くんの声は感情的ではなく、とても落ち着いていた。

いつもと同じ、聞き取りやすい少し低めの声が、体育館の空気を揺らす。


感情的ではない。

……だけど、そこには確かに速水くんの想いが込められていた。

私にはちゃんとそれが伝わってくる。


────ねぇ、須谷くん。

このスピーチ、ちゃんと聞いているんでしょ?


速水くんが須谷くんのことを必要と思うわけない、って須谷くんは言ったけど。

このスピーチを聞いたら、伝わるよね?


速水くんが、本当に須谷くんを必要だと思っていること。

一緒に頑張りたいと思っていること。


……速水くんだけじゃない。

ここにいるメンバー全員が、須谷くんが仲間になってくれることを、待ってるよ。


「だから」


速水くんがつなげようとした言葉は、ふいに途切れた。