ぽたぽたと頬を伝っていく涙に気付いた速水くんが、驚いて私を抱きしめていた腕をほどく。
「な、なんで泣いて……」
私を見る速水くんの目に浮かんだ狼狽の色に気付いても、私は涙を止めることなんかできなかった。
「ごめん、そんなに嫌だった?」
何を勘違いしたのか、速水くんにしては珍しい的外れな言葉に、私は慌ててぶんぶんと大きく首を横に振る。
嫌なわけ、ない。
好きな人に好きって言ってもらえて、好きな人に抱きしめてもらえて、嫌なわけないよ。
「違うよ。……全然違う」
いつもなら私の考えてることなんてすぐにわかっちゃうくせに、どうして今は分かってくれないの?
それがなんだかおかしくて、私は思わず小さく笑った。
────その拍子にポタリと落ちた涙。
きっとそれが、最後の一粒。
「速水くん」