速水くんって。

私より、ずっと大人だと思っていた。

私より、ずっと冷めた人だと思っていた。


……私なんて、クラスメイトにさえ届かないくらいの、取るに足らない存在に見られているのだと思っていたのに。


私の言葉を信じてくれて。

呆れながらも隣にいてくれて。



1年間も、同じ場所にいたのに。

私。

速水くんのこと、何も分かっていなかったんだ。


苦手だから、って自分から距離を置いて。

どうせわかってもらえないから、って自分の気持ちを言葉にするのを諦めていた。


もしかして。

もしかして、初めから速水くんの前でも私が私らしくいることができていたら。


速水くんがあんなふうにあたたかく笑うこと、もっと早く気付けていたのかな。

速水くんのバカみたいに素直なところ、知ることができていたのかな。


分かりにくいけど。

不器用なところもあるけど。

冷たいところもあるけれど、ちゃんと優しいところもあるんだ、っていうこと。

……志賀先輩より先に見つけられていたのかな。