そしてそれは、立候補する役員の役名を書くところで。
今は書記をしている速水くんは、3年生に上がってもきっとその役割を続けていくんだろうと思っていた。
今の今まで、彼が立候補しようとしているのは書記なんだと思っていた。
……のに。
書記、と書いてあるはずの欄には、整った字で『生徒会長』と書いてある。
────えっ。
「生徒会長っ!?」
驚いて、紙を思わず二度見。
バッ、と机の上から紙を持ちあげてみるけど、何度見てもその文字は変わらない。
「は、速水くん。これ、生徒会長って書いてある」
速水くんを見てそう言えば、お決まりの呆れ顔。
「そりゃあ、生徒会長に立候補するんだからそう書いてあるに決まってるでしょ」
当たり前のように返されて、それはそうかと頷くしかない。
────『生徒会長になって学校を変えてやる、くらいの意気込みがなきゃ、龍也さんに勝てるわけないよ!』