「できた」

そう言うと、陽はくるりと俺の方に身体を向けた。

「すごい、あっという間!遥斗、ありがとね」


手鏡で出来栄えを確認した陽は、そう言ってにっこり笑った。

いつも、思うけど。

無駄のない整った顔立ちは、柔らかい女性らしさというよりは、強く凛々しい印象が先立つ。

陽が髪を結うと、なおさらそれが際立つような気がした。



「さっそく結奈に見せてくる!」


どうやら出来には満足してもらえたらしい。

陽は上機嫌でリビングに戻っていった。

背中で揺れる癖のない黒髪をなんとなしに眺めつつ、俺も後に続き、食べかけだったケーキを食べようと、さっきと同じ椅子に座る。


「わああ、ヒナ、それつけてくれたの!?似合う~!」

「えへへ、結奈、ありがとう!」


きゃあきゃあと聞こえてくる賑やかな声に、ふう、と思わずひとつ息を吐いた。


俺と一緒にいるときは、陽はあくまで上級生としての態度を崩そうとしない。

それは俺と一緒にいるときに限ったことではなくて、生徒会メンバーの下級生に対しては誰にでも等しくそういう態度。