意味の分からない思考を振り払うように、黙々と食べ物を口に運んでいると、ふいに肩を叩かれた。
「遥斗」
呼ばれて顔を上げれば陽がいて、ちょいちょいと手招きしている。
「ちょっと手伝って欲しいんだけど」
「……何?」
立ちあがって、リビングを出た陽の後に続いた。
リビングのドアを閉めると、陽は俺の方を見て、両手を差し出してきた。
「?」
見ると、陽の掌には可愛らしい髪飾りが乗っていた。
ちょうど、晴山さんと買い物をした店にあったようなヘアアクセサリー。
陽の掌の上のそれは、水色でもリボンの形でもなかったけど。
思わず、髪を上げた晴山さんのことを思い出してしまって、慌てて思考を切り替えた。
「……これが、どうかした?」
ヘアアクセサリーから陽の顔に視線を移すと、陽は困ったように笑っていた。
「これ、さっきプレゼントに、って結奈からもらったの。せっかくだからつけたいんだけど、私、すっごく不器用で……。こういうの上手くつけられないのよ」