完璧に記憶を失くして、
俺の事すら記憶から消し去ろうと
しているんじゃないか?とさえ感じた。
同じマンションなのに
俺の住んでいる階が思い出せなくなったり、
誕生日忘れられたり。
時間がただ無駄に進むだけで
伊勢自身は悪化していた。
辛かった。俺が。
毎日、抜け殻のような彼女を見ていて。
高校も一緒にして毎朝迎えに行くのも、
部活に入らないで一緒に下校するのも
俺の事を忘れてほしくないから。
過去の記憶は無理に思い出さなくていいから、
せめて今の俺の事だけは記憶から消し去ってほしくなかった。
だから少しでも一緒に居る時間を作った。
小学生の時に両親が離婚し、
中学生の時にお姉さんを亡くした。
父親の方は未だに行方が分かっていない。
一人ぼっちになった伊勢をみて
俺が守るって中学の時思った。
でもそれは今でも変わらない。