「伊勢。ゆっくりでいいんだ。」
あの後、春紀はずっと優しい言葉をかけてくれていた。
最後、レターセットをテーブルの上に置いて帰って行った。
『伊勢、自分に手紙書こうか。』
ピンク色の便箋が妙に可愛らしく切なくなった。
こんな可愛い手紙に書けないよ…。
その夜、私は一晩中泣いた。
ずっとずっと泣き続けた。
今まで心の中にあった違和感と虚無感が
記憶を思い出したことで一致した。
アタシあの時から記憶失くしてたんだ。
思い出そうともしなかった。
【思い出したくないから?】
私は一人だった。
【でも本当は一人じゃなかった】
私は恐怖に飲まれそうで怖い。
【事実から目を背けた罪悪感に飲まれそうで?】
自分が悪いことは知っている。
【そう、全部貴女のせい】
もう一人の自分が正しい事言っている。