キャップをかぶっているその人を見て、私は目を疑った。

だって、そこにいるはずがない人が、目の前に立っている。

思ってもみない人がいるんだ。


私は思わず、後ずさりをした。

目の前にある現実が信じられなかった。



「亜季っ」



少し力強い口調で、彼に呼ばれた。

そのとたん、ビクッと体が震えた。

そして、足が止まる。


その時に思い出したんだ。

最初に会うことになった時、条件を出されたことに。

それに、ついさっき同じことを言われたことに。


だけど、ようやく分かった。

会うのを躊躇っていた理由。

2人して微妙な反応だった理由が分かった。