―――その日の夜。 私はピアノを弾いていた。 ただひたすらに、何も考えず 夜想曲を奏でる。 すると、小さいけれどはっきり、 カタン…と音が聞こえた。 不思議に思い、私は近くのカーテンを そっ、と引き、鍵を開け、 そして、窓を開けた。 …あれ…? キョロキョロ、と首を左右に振り 辺りを見回す。 …が、人の影もなければ 何かの気配すらない。 ただ、肌寒い風が 吹き抜けてくるだけだった。