「ハアハアハアッ・・・・・・」

翔が行きそうなところはすべて探した。

でもいない・・・・・・。

翔の事を思うと、胸が痛くなった。

何時も私のワガママを聞いてくれた翔。

何時も笑ってた翔。

辛くない筈が無いのに、無理して笑ってた。

私は、翔の事、何でも知ってる様な顔をして、何にも知らなかったんだ。

翔の心、知らない。

「うっ・・・・・・」

見つからない翔。前に文子さんに言われた、現実。

それらが重なって、私は今までに感じたことの無かった震えに襲われた。

ガサガサと私の背丈位もある草むらを掻き分け、私は叫んだ。

「翔ぅーーーーーー!」

その時、ピイイイイイーーーと言う笛の音がどこかから聞こえた。

もしかして、翔?

この笛の音は昔、私がプレゼントした笛の音によく似ていた。

でも、雨の音が強くて、よく聞こえない・・・・・・。

私は、さっきよりも大きな声で言った。

「翔ぅうぅう――――ッ!!!」

すると、ピイイイ―――ッ!とさっきよりも強い音がした。

左・・・・・・?

ガサガサと笛の音が聞こえた方向に走る。

「!!!!翔ッ!!!!」

そこにはボロボロになり、雨に打たれている翔がいた。

嘘だ・・・・・・。

「翔、翔!?大丈夫!?今、病院つれてくからっ・・・・・・!!」

私が必死に呼びかけても、翔は弱い息をするだけだった。

―翔、死なないよね?

 ずっと、私の傍にいてくれるんだよね?―

悲しくて、涙が出た。

私はその涙を拭いもせず、走っていた。