私には、文子さんの言葉が理解できなかった。

「え・・・・・・あの、よくならないって・・・・・・?」

私が恐る恐る聞くと、文子さんは言った。

「この前、翔が熱出したでしょ?その時に、言われたの。もう・・・・・・よくならないんだって・・・・・・。翔は、その事を知ってる。あの子、病院じゃなくて家に居たいっていったから、自宅療養ってことになったの・・・・・・」

「うそ・・・・・・そんな・・・・・・じゃあ、翔は・・・・・・翔の、いのち、は?」

「あと・・・・・・もって、







                       1年。」

私は、文子さんのこんなにも苦しそうな顔を見たことがなかった。

そして、唐突過ぎて、信じられなかった。

翔が・・・・・・後1年でいなくなっちゃう?

信じられないよ・・・・・・。

「うそだっ・・・・・・」

私はそれだけ言って走った。

その時は悲しかった、というより、信じられなくて。

石につまずき転び、その痛みで初めてここが現実だと思った。

夢だと思いたかった。

けど、ここは現実なんだ・・・・・・。

そう思った途端、絶望感が襲ってきた。

そして目から大粒の雫が流れてきて、頬をぬらした。

「うそだ・・・・・・うそだぁ・・・・・・」

私には、今の現実をただただ否定することしか出来なかった。