私は、翔の墓の前に立っていた。

ガサッと擦れる音をたてる花。

「翔。元気?あの頃は、まだ私たち幼かったよね。」

それから、私はただ翔との思い出を話し続けた。

返事が返って来ないとはわかっていたけれど。

馬鹿な望みを打ち消すために。

悲しみから抜け出すように。

私は語り続けた。

「翔はもういないけど、私はね、生きてる。だから、精一杯生きてくよ。」

時には貴方を忘れてしまうかもしれない。

けれど、貴方と会っていなければ、私は"今の私"にはなれなかった。

ありがとう。

あと、あとね。

一番言いたかった言葉があるんだよ。

私はすっと息を吸うと、言った。

「大好きだったよ・・・・・・。」

ぽろ、と落ちる涙。

でも、悲しくは無かった。

翔。大好き。

言えて満足だった。

最後は笑顔で。

私は墓に向かって・・・・・・否、翔に向かって笑いかけた。

「ばいばい。」

そういって立ち上がると、後ろから声がした。

"ありがとう。愛してる"

にっこりと笑った翔が手を振っていた。

私は震える唇で必死に言葉を紡いだ。

「翔っ・・・・・・好きだよっ・・・・・・」

そう言うと、翔は光になって消えた。

ばか。

笑顔で去ろうと思ったのに・・・・・・。

結局・・・・・・。

私は、笑ってた。