「はい。ありがとうございます。」
高校生の頃、母親が病気で亡くなり、もともと母子家庭だった僕は一人暮らしを始めた。
彼女の母親はよく気にかけてくれていた。
「そう、よかったわ。ああそうだ、もう聞いてるかしら?亜香里がね、今度紹介したい人がいるみたいなのよ。知ってるかしら?」
言葉が出なかった。
何を驚いているのだろう。そうだ、彼女はもう前に進んでいるのだ。
忘れられていないのは、僕だけだ。
「私亜香里は恭弥くんとだとばっかり思っていたから驚いて。でもまあ、恭弥くんにも素敵な人がいるんでしょうね。」
「あ、、、まあ。すみません、用事があるので。また。」
苦しい。
はやく忘れなければ。