今日は手抜きをせず、しっかり作ろう。ロールキャベツがいいな。

ロールキャベツを作っている時の時間の流れは早い。餃子もそうだけど、包む作業は気が紛れる。


この目と指先がその感覚を知っている。


駅前のスーパーで材料を買って帰ろう。


くまさんの残像が微かに残るカプチーノを飲み終えた時、窓の向こうに赤く光るものが見えた。

工事現場の誘導灯だ。

振っているのは多分、女性。

ヘルメットで顔は見えないけど、胸に膨らみがあった。


闇に浮かぶ赤が線香花火の最後みたいで綺麗なのにちょっぴり寂しい気分。


線香花火の最後って遺伝子が途絶えるような気持ちになる。


私は私の遺伝子をちゃんと残したい。子供が好きだし。できれば二、三人。

子供と共に過ごす陽溜まりを求めている。


「うん、帰ろう」


自分で自分のなにかに納得して席を立った時、工事現場に入るトラックのヘッドライトで、その女性の顔が見えた。


「……お母さん!!」


私はカフェのまだ開き切っていない自動ドアにぶつかりそうになりながら外へ飛び出した。