うちから歩いて二十分。
国道沿い。
時刻は午後二時。
日曜日という事もあって賑わっている店内。
遅めの昼食を食べている家族連れや、ケーキセットを頼んでいる女性たち。
子供が店内を走り回っている。
その様子が自動ドアの前から窺えた。
みんな笑顔で楽しそう。
こんな日曜の午後が私の理想だ。
お母さんの姿はない。
楽しい時間を壊してしまわないように裏口へ回る。
できれば迷惑をかけたくない。
どうしようかと考えていると、ゴミを出しにきた店長の姿が見えた。
「あの、すみません」
発作的に声をかけた。
「はい?」
「私、玉置涼子の娘です。今日、母は?」
自分でも意外な程、スムーズに話せている。
「玉置さんなら辞めましたよ。一週間位前かな」
一週間位前といえば、お母さんがうちを出て行った日と重なる。
「お母さん、家を出て行ったんです」
「えっ」
「お母さんの居場所知ってますよね」
「いや、知りませんよ」
「だって、お母さんとつき合ってたんでしょ」
職業病なのか、その店長は私と厄介な話をしているにも関わらず、にこにこしていて、声も張っていた。
今にも「いらっしゃいませ」と言いそうな、研修通りの規則正しいファミレスの店長、という感じ。