そこには、スーツ姿で坊主頭のいかつい男がケータイを手に話しながら立っていた。

威圧感に怯む私。

会話の内容からお父さんが話している相手だとわかった。


「お父さん、お父さん、早く来て!!」


「どうした、梨織」


相手の姿を見て、異様なものを感じたお父さんは、近所の人に迷惑だからと、その人を玄関へ入れた。



いかつい男は借金取りだった。

お母さんには数百万の借金があるという。


お父さんは「そんなはずない」と言ったけど、借用書にはお母さんの筆跡でサインがしてあり、拇印も押されていた。


「奥さん、どこにいるんですか。知ってるんでしょ!!」



「いえ、知りません」


お父さんは怯む事なく答えた。


「隠すなら言いますよ。ご近所さんに大声で。ここの奥さんは借金を返してくれません。その上、失踪しました。人間としていかがなものでしょうか、って。ビラを配ってもいい」


「警察を呼びますよ」



冷静なお父さんの態度に男は怒りを示し、玄関にあった花瓶を地面に叩きつけた。


そして、その破片を拾い、私の首元に押しつけた。


「娘になにをするんです!!」


「奥さんによろしくお伝えください。それから、ご連絡お待ちしております、と」


男は私に向けていた破片を壁に突き刺し、帰っていった。


「梨織、大丈夫か!!」


「うん、大丈夫」


冷や汗が額から首まで伝うように流れていた。



この家に引っ越してきたのは、私が幼稚園生の時。新築の建て売りだった。