お父さんは社長のお嬢さんにあんみつのおいしいお店があるからと連れていかれたらしい。
甘いものが苦手なのに。きっと無理をして食べたのだろう。
「お父さん、ごめんなさい」
「バカだな。要らぬ心配なんてして。もしかして、お母さんの事も知ってるのか?」
お父さんはお母さんと店長の事に気づいていた。
でも、深い関係ではないだろう、と言う。
私はそうじゃないと思う。
お母さんは衝動でしてしまう人なのだから。それをお父さんには言えなかった。
お母さんのケータイに電話をかけてみる。
『この電話は電波の届かない所にあるか電源が入っていないためかかりません』
何度かけても繋がらない。
お父さんがお母さんを捜しに行こうとした瞬間、うちの電話が鳴った。
「お母さんからかも!」
「はい、玉置です。涼子は私の妻ですが、今、外出中でして。……えっ、そんな。なにかの間違いでしょ」
違う。お母さんからじゃない。
誰からだろうと思っていると、玄関のドアを『ドンドン』叩く音がした。
もう、うるさいな。
インターフォンがあるのに。
私は玄関へ行き、乱暴にドアを開けた。