一週間ぶりの帰宅。
ボストンバックを持って入ると外泊がバレてしまう。
私はそれを家の裏にある小さな物置に入れた。
玄関の鍵は開いていた。
お母さんも帰ってきているのだろうか。
ドアを開けて中へ。堂々とは入れなかった。
「ただいま」
控え目なトーンで取り敢えず言ってみた。
『おかえり』の言葉を探しながらリビングへ。
そこにはスーツ姿のお父さんがいた。
「梨織、心配したんだぞ」
「ごめん。いつ帰ってきたの?」
「今朝だ。母さんは?」と、お父さんに聞かれ、まだ帰ってきてないのだとわかった。
「知らない」
「知らない、って。そんな平然と言うんじゃない。梨織のお母さんなんだぞ」
平然となんて言ってないよ。
私だって心配してるんだ、本当は、お母さんの事。
天野くんと出逢えたのはお母さんのおかげ。お母さんが私を産んでくれたから。
今は心からそう思える。
もう、聞いてみるしかない。遠回りしてたら、いつまで経っても飛べない。