遊園地のおばけ屋敷でもそうだった。

お父さんのシャツの裾をギュっと握って、その背中に隠れるようにして前に進んで。


でも、実はお父さんも相当怖かったらしい。私と一緒じゃなかったら、走って逃げていた、と。


お父さんは子供の前では強くなれるんだと思った。


なにより鮮明に覚えているのは、ブランコで背中を押してくれた大きな手。


お母さんには求められない愛情をお父さんひとりに求めていた。


だから、不幸を売りにして愛情を得たくはなかったし、お父さんに心配させたくなかった。




ずっと考えていた。


お母さんが何故私にこんな事をするのか。


でもその答えはどこにもなかった。

きっと衝動なのだ。

お母さんはそういう衝動にかられてしまう人なんだ。


私はそう思う事で自分の片づけられない気持ちをなだめ、全てを諦めていた。


そうしなければ、ストレスが私の体をむしばむ。


奥歯がズキンと痛んだり、こめかみが脳を押しつけた。