子供の頃、私がちょっとでも言う事を聞かないと、煙草の火を押しつけられた。
言う事を聞かないと、ではない。聞いても聞かなくても、それは理不尽にやってきた。
最初の頃は手の甲だったけど、友達が私のうちに遊びに来た時「梨織ちゃん、その手どうしたの?」と聞いたその日から、そのターゲットは胸へと変わった。
手の甲だと周りにバレるからだ。
胸ならいつだってシャツに隠れている。
勿論、抵抗した。
やられるままなんて残酷過ぎる。
私はお母さんの手にかみついた。
それにより、前よりも、もっと長く、頻繁に煙草の火を押しつけられるようになった。
抵抗するとこうなるんだ、と脳に焼きつくように思った。
それから私は縁日ですくわれた死んだ金魚のようにそれを受け入れるようになった。
死んだ金魚にもプライドがあって、泣きたくても泣かなかった。悔し過ぎて。
体をよじらせながら、アップアップと口だけはパクパクしていた。
あぶくは助けを求めるサイン。