お母さんはパートの帰りに、男と会っていた。


美鈴からカラオケに誘われたとルミからメールが来た日、一人で、いや、独りだから映画館へ行った。


私はスクリーンから九番目の席で、五番目の席にお母さんが座っていたのだ。隣にいたのは、お母さんが働くファミレスに行った時に見かけた店長だった。


私は、映画館から出て行く二人の姿を写メで撮った。


溜め息が出るくらいつまらないアクション映画に不倫もどきのおみやげがついてきた、そんな感じだった。


その後、週五日パートしているはずのお母さんが週三日しか勤務していない事がわかった。


同じファミレスで働く噂話が好きそうなおばさんがペラペラと話してくれたのだ。お母さんとは関係のない不要な情報まで取得してしまった。


世の中、怖いと思う。プライバシーなんて覗かれ放題なのだ。


このケータイにはルミからのメールの他に秘密の写メが入っている。


今日もお父さんは大阪に出張、お母さんはパート。


熱と戦う私が二人の真っ赤に染まった嘘を写メで確認しようとした瞬間、着信音がした。


《キッチンにおかゆがあるから温めて食べて》

お母さんからのメールだった。