朝ご飯はトーストと目玉焼き。グリンピースのスープ。
「目玉焼きね、私、半熟派なんだけど、蒼太くんも半熟で平気?」
「俺も半熟派。それはいいんだけど、この緑のスープ」
「グリンピースのスープだよ」
「グリンピース……」
「もしかしてグリンピース嫌い?」
天野くんが柴犬みたいな目でコクンと頷いた。
「嫌いなら昨日スーパーで言ってくれればよかったのに」
「いや、まさかさ、グリンピースだけで出てくるとは思わないだろ。なにかの彩りとかさ」
「グリンピースだけじゃないよ。牛乳とコンソメとバターと玉ねぎと」
説明しているうちに、天野くんがスープを口に含んだ。
「無理に食べなくていいよ」
「イケル」
天野くんが再び柴犬みたいな目でコクンと頷いた。
「うまい、イケル。つーかグリンピース好きになったかも!!」
「ほんと?」
「うん。俺、食えないものは絶対食わないから」
嬉しかった。
料理はこうやって食べてくれる人がいて、褒められてこそ作り甲斐があるものなんだと思う。
最近の私はひとりで料理を作って、ひとりで食べて、ひとりで食器を洗って。
寂しかったんだ、本当は。
誰にも言えなかったけど寂しかった。
でももう大丈夫。天野くんがいるんだから。