天野くんはプリントの英文を見て、和訳をノートにすらすら書き始めた。
「すごい。それほんとに訳してるの?」
「訳してるよ。っていうか疑い過ぎ」
「ごめん……」
「俺、小さい頃、アメリカにいた事あってさ」
天野くんの新情報にちょっと興奮。
「えー、そうなんだ。なんで、どうして」
「なんで、どうしてって。ほら、親父の仕事の関係でさ」
「なーんか、かっこいい。だからお姉さんもアメリカにご縁があったんだね」
私はその日、はしゃいでしまった。
なにも知らなかったから、ひとりでいい気分になって、勝手に虹を見て、これが幸せなんだって。
天野くんは私が思っている以上にマイペースな人、なんかじゃなかったのに。