中学の修学旅行で京都に行った時、渡月橋にお父さんによく似た人がいた。
でもお父さんは大阪に出張しているはずでこんな場所にいるはずがない。
その人は黒いサングラスをかけた二十代と思われる髪の長い女性と手を繋いで歩いていた。
私は先生に「頭痛がする」と言って、先に一人で宿に帰る許可をもらった。
勿論、頭痛なんて嘘でその人がお父さんではない事を確かめるために尾行したのだ。
そんな尾行、しなければよかった。他人だと思っておけばよかった。
見れば見るほど、お父さんだった。
娘が修学旅行で京都に来ているという事も知らない。娘の私には興味がないのに、この女には興味があるのだろうか。
私は、京都のカフェレストランへ入った二人を写メで撮った。
女の真っ赤な唇が今でも頭から離れない。