土手に座って天野くんと花火を見上げる。
───ひゅー……───どーん、どどーん。
大地を響かせ、夜空を焦がすように打ち上っていく花火たち。
「蒼太くん、見て見て、すごいよ」
「おお、すげーな」
──ひゅー……───どどーん、どどーん。
花火大会に来たの、って何年ぶりだろう。
そんな事を思いながら、ふと、天野くんを見ると、その瞳の中に花火が映っていた。
花びらが折り重なり、瞳の縁を彩っていく。
そんな天野くんの瞳に見とれてしまった。
「梨織、なに? せっかくの花火終わっちゃうぞ」
「うん」
視線を夜空へと上げた。
大輪の花が咲いていく。
手を伸ばせば届きそう。
「……綺麗」
私は花火の瞬きに誘われるように立ち上がった。
そんな私を天野くんが抱き締めた。
「綺麗だよ」と、強く、そして、やわらかく。
……───今、私の胸にある傷と天野くんの胸の傷が再び重なり合っている。
ふたつの傷が重なっている。
人生に手遅れなんてない。
そう信じて今という時を精一杯生きていく。
瞬く花火のように大輪の花を咲かせながら。
【重なり合う、ふたつの傷*END】