駅の側にある椿書店の前に猫がいた。
まるで招き猫。
引き戸の前に座って、ここでお客さんを招き入れているみたい。
白と黒のブチ模様がかわいくて、しゃがんでそのコの頭を撫でた。
「かわいい。白と黒でパンダ柄だね」
「それを言うなら牛柄だろ」
「えー、そうなの? いいじゃん、パンダ柄でも」
「まぁいいけど」
『にゃーん』そんな甘えた声で見つめられると、たまらなくなっちゃう。
かわいすぎる。
そう思いながらお腹を撫でていたら、そのコが私の膝の上に、ぴょんと飛び乗った。
「蒼太くん、どうしよう。このコ、連れて帰りたい」
「だめだって。首輪してるし」
「ほんとだ」
紅色の首輪がついていた。
毛並みもいいし、きっとこのコはこの本屋さんで幸せに暮らしているんだと思った。
このコが幸せならそれが一番だ。
私は駅の券売機でICカードにチャージをした。
「蒼太くん、じゃあね」
「気をつけて帰れよ」
「うんっ」
改札を通って振り返ると天野くんに言った。
「ありがとう」と。