帰る前、天野くんのお母さんにグレープフルーツのゼリーの作り方を教わった。
グレープフルーツの皮を剥いたり、房から出したり、鍋に水とグラニュー糖を入れたり。
失敗したらどうしようなんて最初は思っていたけど、色々話しているうちにすっかり仲良くなっていた。
「梨織ちゃん、今度一緒に、お買い物行かない?」
「はいっ、喜んで」
「そうだ、次にアメリカへ行く時は梨織ちゃんも一緒に」
「いいんですか?」
「大歓迎よ。それから、銀座においしいケーキ屋さんがあってね。そこのスティックチーズケーキがおいしいのよ」
「私、チーズケーキ大好きなんです!!」
私とお母さんの会話は途切れる事なく続いた。
永遠に続く円周率のように。
天野くんがその会話を聞きながら、うな垂れた。
借りてきた猫状態。
女子二人の会話に入り込む余地などない。
でも、きっと嬉しいと思ってくれているはず。