浮遊して見る夏の星座はプラネタリウムよりもずっとずっと綺麗だった。


「ほら、もう大丈夫だろ」


気がつくと零士の手が離れていた。


それでも私は浮いていられた。


プールって、こんなに気持ちいいんだ。


私は憂いのない人魚になった。




水を揺るがせた後、零士とプールサイドに腰を下ろした。


私の透けた下着を隠すように零士が脱いであったシャツを肩にかけてくれた。


「ありがとう」


「君のいい所はそうやって素直にありがとう、って言える所だよ。天野って奴の前でも素直になって正面から向き合ってみたら。斜めに見ていたら、世界は歪むばかりだよ」


その言葉に頷いた。


これまで私が見ていた世界はずっと歪んでいたんだと思う。


それが今になってちょっとずつ前を向いてきた。


これからは自分自身で正面を向けるようになりたい。


零士が水面を蹴った。

その水しぶきが流星のように煌めいた。


「実はさ、メジャーデビューが決まったんだ。明日のライブの後、関係者だけが集まるパーティがあってさ。マスコミもかなり来るらしいよ」


「えっ!! すごい」


陸に上がった人魚の鼓動が急上昇した。


「正式発表はまだだから、内緒にしといて」


「了解です」


零士のガラス玉のような瞳がいつにも増して輝いていた。


現在進行形で夢が叶う人の瞳って、こんなに綺麗なんだ。


私の瞳は平凡でインパクトがない。元々、私自身に存在感がないのだけれど。