零士は錆の目立つ門に手をかけてそれを飛び越えた。
「えっ、なにしてんの」
「いいから、ほら、おいで」
優しいその『おいで』の言葉が魅惑的だった。
だけど、無理。
ハードルだって飛び越えられない私が、零士みたいに門を飛び越えられるはずがない。
爪先が引っかかり『THE END』だろう。
仕方なく、門をよじ登るようにして乗り越えようとした時、バランスを崩した。
「うわっ!!」
その瞬間、零士の手が私の体を包み、抱き抱えてくれた。
それはお姫さま抱っこ。
「大丈夫か?」
「大丈夫。それより早く降ろしてっ。重いでしょ」
お姫さま抱っこが恥ずかしくて足をバタバタさせた。
「おい、暴れんな、って」
格闘するようなカタチでやっと地上へ降ろしてくれた。