うわーーー、バイクが走り出した。
怖いよっ、怖い。
目をつぶってると余計怖いじゃん。
『!!』
私は思い切って目を開けた。
街のネオンを引き連れ、加速していくバイク。
最初はうるさいと思っていたエンジン音が気持ち良くなってきた。
それとは対照的にバイクから降り落とされないよう、零士の背中に必死でしがみついている私。
「そんなにしがみつかなくても平気だって」
「やだ、怖いもん」
「こっちが苦しいんだよ」
エンジン音と風の音が邪魔をして零士の声がよく聞こえない。
「ん、なに? 聞こえないよ」
このシチュエーションで、天野くんと自転車に乗った時の事が蘇ってきた。
天野くんの鼓動を零士に求めてみたけど、あまりに強くしがみついているからか、零士の鼓動は聞こえなかった。
しがみついたままバイクが停止した。
「ほら、着いたぞ」
「うう゛っ」
半泣き状態でヘルメットを外すと、零士は既にバイクを降りていた。