兎と森のカフェへ行ってみた。
「こんにちは」
「いらっしゃい」
マスターの『いらっしゃい』が心地よく胸に響き、初めて、カウンター席に腰を下ろした。
「カプチーノください。できれば、うさぎさんで」
「かしこまりました」
しばらくして、出されたコーヒーカップの中には、うさぎさんがいた。
「あの、前に私と一緒に来てた天野くんって人知ってます?」
「存じてますよ」
「その天野くんのお姉さんは知ってますか?」
「ええ」
「天野くんのお姉さんが最後にここに来たの、っていつですか?」
「さあ、いつだったでしょうか」
「お姉さん、アメリカで結婚した、って聞いたんですけど本当ですか?」
「私もそう聞いてますよ」
「天野くん、私の事、なにか言ってませんでしたか?」
「いいえ、なにも」
「じゃ、天野くん自身がアメリカに行くって聞いてましたか?」
「いいえ」
「それからっ」
私は寡黙なマスターに立て続けに質問をしていた。