マスクをして学校へ向かった。
そのマスクがちょうどよかった。
喉の保湿のためではなく、人と話さないために。
風邪をひいているであろう私に話しかけてきた人はルミを含めて数人だった。
マスクをしていると必要以上に話さなくてもすむという新たな使い方を発見した。
私は自分の声がコンプレックスだからこれでちょうどいい。
その後、廊下で何度か清水くんとすれ違った。忘れようと思っていたのにその度に天野くんの事を思い出した。
清水くんに何度も声をかけようと思ったけど、かけられなかった。天野くんとの決定的な別れを突きつけられそうで。
ルミは清水くんのメアドを知っていて、教えてくれると言ったけどそれも拒否した。
マスクを外した私の口の中には口内炎がいくつもできていた。
雨の日の風邪の名残と天野くんを失ったショックがそれを引き起こしているのかもしれない。
胃も荒れているようで食欲もなくて。
倒れそうなくらい体が疲れ、それに伴うように心も行き詰まり、なにもしたくなくなった。
それはまるでドーナツ。
その悪循環を断ち切らなければならない。