小さい頃、アメリカにいたのは心臓の手術のため。だけど『もう大丈夫』って言っていた。
なのにアメリカへ行っちゃったのは、これ以上、私と関わりたくないから。
でなきゃ、行ってくる、って言ってくれたはず。
黙って行っちゃったんだから……。
私は天野くんの家の前でそう思った。
インターフォンを押したけどなんの返事もない。
人がいそうな気配もない。
……本当に行っちゃったんだ。
預かったままの鍵をポストに入れた。
あの夜、ふたつの傷が重なって、全てをわかり合えた気がしていたけど、わかり合えてなんかいなかったんだ。
ひとりではしゃいだり、浮かれたりしていた私。
本当に天然だ。