「バスケ部の先輩から声かけられちゃって。でも俺、バスケだめでさ。部活なんて面倒だからしたくないんだ」
今、この声、私に話しかけてる?
今って私が答える番?
「わ、私もです。できれば部活は入りたくないと思ってます」
「じゃ、帰ればいいのに」
「ルミが、あー、神田ルミちゃんが部活見学に行ってて、戻るの待ってるから」
「へぇー、玉置って優しいんだな。俺なら帰っちゃうよ」
天野くんが微笑んだ。
私たち会話成立した?
したよね?
しかも『玉置』って私の名前覚えててくれた。
「俺、帰宅部。じゃ先帰るわ」
「は、はい」
「また明日」
天野くんが出て行ってから、私は蜃気楼のようななにかに包まれていた。
そして、胸が『ドクドク』してきた。
天野くんが『また明日』って言った。
今まで『ドキドキ』した事はあったけど、『ドクドク』した事はなかった。
蜃気楼状態から抜け出した時、ルミが戻ってきた。
「やっぱりルミはバスケにしたよ」
「えっ。天野くん」
「バスケ部に天野くんよりかっこいい先輩がいたの。佐伯先輩!!」
「そ、そうなんだ」
ルミが天野くんよりかっこいい人を見つけてくれてなんだか安心した。
私は恋をしたのだ、天野くんに。こんなに誰かを好きになったのは初めてだった。