日曜日。ついに引っ越しの日がきた。

引っ越し、ってこんなにも面倒なんだ。

とっておきたかった物も不要品へと変わった。

良い思い出も不燃ゴミへ捨てなければならなかった。


でも、これでもうあのいかつい男の顔を見る事はない。


引っ越し業者の人が何度も出入りを繰り返し、ダンボールや家具を運んでいく。


丁寧に扱ってくれていても知らない人が出入りするって自分たちのバリケードを突破されたような気持ち。


それ以上に悲しいのは必要なのに手放さなければならない物。


リビングに置かれていたソファーもそう。


座面がベージュで肘がアイボリーの三人掛け。

ひとりで家にいる時、私はここで寝転んでテレビを見ていた。

子供の頃からずっと使っていたから質感も私の肌に馴染んでいた。


だけど、これから住むマンションには入らない。


大好きだったソファーはリサイクルショップへと姿を消した。