一時間近くかけ、ベランダや屋根裏、床下、外壁も見て帰った。
「はぁ……」
疲れた。あまり良い印象のご夫婦ではなかった。
でも一生住む家を買うのだから当然。
まあうちはこの家を手放す事態に陥ったけど。
次にこの家に住む人には一生住んでほしい。
私たちの歴史が詰まったこの家を大切にしてほしい。
しばらくして、不動産屋さんの前を通ると、うちの写真がなくなっていた。
買い手は内覧に来たあのご夫婦。
こんなにスムーズに売れる事ってあまりないらしい。
不動産屋さんの担当者はお父さんに「ラッキーでしたね」と言った。
ラッキーなのかどうか私にはわからない。
いつか犬や猫を飼いたいとペットショップに通っていたけど、それも叶わぬ夢となった。
もっと早く飼っておけばよかった。今というこの状況になって後悔が押し寄せてきた。
でもちゃんと面倒を見る自信がなかった。自分の事だけで精一杯な状態で飼ってもかわいそうな思いをさせてしまうと思うし。