その日、私はクラスの女子の半数、十人とメアド(メールアドレス)を交換した。
きっとこのピンクのケータイも喜んでいるだろう。
家に帰ってから夜の八時までにメアドを交換したほぼ全員からメールが来た。
どのお菓子がおいしいとか、テレビでなにを見てるとか、お笑いの誰がスキ、とか。
内容はどれも緊急性はなかったけど、すぐに返信した。
また着信音。
私はベッドに寝そべってケータイを見た。
《拓巳に別れようって言われた。ルミには拓巳がいない世界なんて考えられない。もうシにたいよ》
なんて返信しよう。
こんなに緊急性があるのに、さっきまでみたいに簡単に言葉が浮かんでこない。
気持ちだけが焦る。早くしないと。
《なに言ってるの。ルミがいなくなったら寂しいよ》
私は急いで返信した。
ルミから返信が来ない。
祈るようにケータイを両手で握り締めた。
二分過ぎた。
三分過ぎた。
一分ってこんなに長かったんだ。
五分後、着信音がした。
《梨織、ありがとう。あんな金髪のためにシぬなんてありえないよね》
《よかった。私はルミが必要だし、ルミのいない世の中なんて考えられないから》
本気でそう思っていた。