過去にどんな事があっても離れられない。それが家族だと思った。

例えそれが許せない行為であっても、許せないという気持ちを剥き出しにしていたら、同じ屋根の下でなんて暮らせない。


それぞれ色んな過去を抱えていても一緒にいられる、それが私とお母さんとお父さんという家族なんだ。



私は京都で撮ったお父さんの写メと、映画館で撮ったお母さんの写メを削除した。

こんなものを証拠として保存していた私は無情で非情。どうかしていた。


借金はお父さんがなんとかする、と言った。それだけが心配だった。

あの、いかつい男にはもう会いたくない。

殺されそうな気さえする。


私は、お母さんとお父さんが寝室へ入るのを見届けてから、自分の部屋で眠りに着いた。


天野くんにお母さんが帰ってきたと伝えたかったけど、疲れていて、ただひたすらに眠くて。明日話せばいいと思った。

どうせ明日も会えるんだから。


その思いの通り、翌日も天野くんとは会えたし、お母さんが帰ってきたと言うと「おー、よかったな」と顔をクシャクシャにした。

まるで自分のお母さんがいなくなって見つかったかのように。


ルミもそうだった。泣きそうなくらい喜んでくれた。



壁にできた花瓶の穴はホームセンターで買ってきたセメントのようなものでお父さんが埋めた。

それにより、お互いの隠し続けてきた家族の間にできた穴も塞がった気がした。