チャイムと同時に先生が入ってきた。雨宮先生。名前はルミから聞いていた。
小柄な女の先生だった。
薄化粧で肌がきれい。
優しそうなやわらかい雰囲気。
歳は三十代だろうか。
出席をとった後、予想外の展開が起きた。
「玉置さん、自己紹介をしてください」
なにを急に言っているのだろう、この先生は。
私の頭の中は真っ白になった。
真っ白なまま立ち上がった。
足が震えている。
震えている事がみんなにわかったら私は中学の時のままだ。内気で小心者のまま。
「た、玉置梨織(たまきりお)です……」
次の言葉が出てこない。
「……」
沈黙。
みんなの目がこっちを見ている。
その目は針のようで、私は針山。
一方的に刺されていく無情な状況。痛みを伴う。
中央の席のルミがこっちを向いた。
「梨織、ファイト!」
ルミの言葉で私は笑顔になれた。
「風邪で一日休みましたが、これからみんなと楽しい高校生活を過ごせたら、と思っています。よろしくお願いします」
私が一礼して体を起こすとルミが拍手をしてくれた。
それに続くように、みんなも拍手をしてくれた。
これまでの人生で一番輝いた気がした。