暫くして席に案内された。


店員さんがいなくなった途端に、
優くんが笑う。

「ヤバい!凛ちゃん挙動不審すぎ!
もう笑うのめっちゃ我慢したよ俺。
普通にしててよ!」

「普通がわかんないの!」

笑っている優くんに、
小声で言い軽く睨みながら腕を摘まむ。


「ごめん。そうだよね!
じゃあ俺の言うことに、
うんうんって聞いててね!
俺は凛ちゃんには嘘つかない!

だから、
何を言ってもビックリしすぎたり、
怒ったりしないでね。ごめん。」

意味がわからなかったけど、
聞き直す前に店員さん2人が挨拶にきた。

「はじめまして〜。」笑顔で言う。


「はじめまして。いらっしゃいませ。
いや〜。
優が女の子連れて来るとは驚いたわ〜。」

さっきとは違い少し年配の人。

「オーナー俺だって男ですから。」

そう言って優しい笑顔であたしを見る。


「ごめん!
今日まで、お前はゲイなんじゃないかと、
本気で思ってた。」

オーナーさんの言葉に、
あたしは吹き出してしまった。

カチコチだったあたしは、
この言葉を聞き、
一気に緊張がとけた気がした。

「あたしも!」

そう言うあたしに驚きながらも、

「ゲイって酷くね?」そう言い笑う。


「いや、お前ここに何年も来てるけど、
一度も女となんて来てないじゃん!
彼女いるって言っても連れてこね〜し、
次来ると別れた〜とか言うし。
ずっと忘れられない女いるのにさ。」

「オーナー酷くね?
俺が女とっかえひっかえみたいな言い方!彼女が怒っちゃうじゃん。」

そう言いあたしの頭をポンポンした。

「いや、本気で心配してたの!
ゲイじゃなくて良かったわ〜。
彼女さん、優は優しいの?大丈夫?」


「凛と言います。
ゲイ疑惑の優くんは、
とっても優しくて 真っ直ぐな人です。」

そう笑うあたしのホッペを軽くつねる。

「あ、凛ちゃんなの?あれ?」

そう言い、
優くんに何かを耳打ちするオーナーさん。

え?何?笑顔が嘘だとバレた?
テンパるあたし。

隣にいたさっきの若い店員さんが、

「優さんの初恋の人?」

そうあたしに聞いてきた。

は?
キョトンとするあたし。

意味がわからないし、
笑う事も出来ずにいた。

「そうだよ!凛は俺の初恋の人だよ。
俺はこいつに二度恋をした。」

そう恥ずかしがる事なく言い切ると、

「お〜男だね〜。」と拍手されている。

その横で、
さっきよりも微妙な笑顔を作り笑う。

嘘はつかないと言ってたよね?
ものすごい驚くなとも言ってた。
まぁ、
今は形だけだけど恋人なのは理解出来る。
初恋って何?同じ名前の人?
わからないけど今は聞けないか。
なんなんだろ。ついていけないや。

ギャーギャー騒いでる優くんたちを、
少し離れた所から見ている女の子がいた。

スラっとしていて、色白美人。

その子を見た瞬間、
あ、この子なんだって思った。
こんなキレイな子なの?

なんでこんなキレイな子を振るの?
付き合えばいいのに。お似合いなのに。

そんな事を思っていた。